2015年12月10日

原著作者「怖い話投稿:ホラーテラー」「匿名さん」 2007/12/19 18:31

ある田舎でのお話。

マサオはいつだってニコニコしていた。すこし頭が弱いところもあった。その為、いつもいじめられていた。
中でも特にガキ大将のタロウは、おもちゃのようにマサオをいたぶって弄んだ。
時々、見かねてかばってくれる人もいたが、
マサオは殴られて赤黒くに腫上がった顔で、ニコニコしながら「えへへ」と笑うだけだった。

ある夏の夜。村中の悪ガキを集めてタロウが言った。
「先週死んだ山田のジィさんを掘り起こして、死体を背負ってここまで持ってこい。
 それできたら、お前ぇの事、もういじめねえよ」
「勘弁してくれ。オラ、怖いの苦手だ」
「うるせぇ!今夜夕飯食ったら、山の入り口に集まれ。マサオ、逃げんじゃねぇぞ・・・」
タロウには考えがあった。
先回りして自分が山田のジィさんの墓に入り死体に成り済ます。何も知らないマサオが自分を背負う。
その時にお化けのふりをして脅かしてやろう。
そんで、山から出たら皆で大笑いしてやろう。

日が落ちて山の入り口。
悪ガキどもが集まった。マサオもいた。いつもの様にニコニコして、でも明らかに怯えきっていた。
そして、皆にせかされマサオが一人山に見えなくなると、タロウも急いで山の中へ消えていった。



真っ暗な山の中。明かりは手に持ったろうそくの炎だけ。
マサオは山々の出す音に肩をふるわせながら半刻ばかり歩き、
つい最近掘り起こされたような真新しい土盛りの前に辿り着いた。山田のジィさんの墓だ。
「ホントにすまねえが、今夜ばっかりは、俺におぶられてくれぇ」
独り言を言いながらマサオが墓を掘り始めると、先回りして墓の中にいたタロウは笑いが止まらなかった。
『マサオのやつ、びびっておっ死んじまうんじゃねぇか』

ようやく墓を掘り起こす頃には、ろうそくの炎はとうに燃え尽き、墨汁で染めたような暗闇。
「ジィさん、オラ、こわくてたまらんけぇ、これから村まで走っていくからよ。
 ジィさんを落とすような事があったら、それこそ申し訳ないからな、くくらせてもらうよぅ」
そう言いながら背中にタロウを背負い、真っ赤な帯でしっかり自分と結びつけたマサオは、
山の入り口に向かって一気に走り出した。
タロウは笑いをかみ殺すのが精一杯だった。
こいつは本当に間抜けの大バカもんだ。
どんな顔をしてるんだろう。きっとこれまで見た事もない間抜けな顔をしているぞ。小便も漏らしるんじゃねぇのか。
マサオの背中の上でほくそ笑んだ。

帰り道も半分にさしかかった頃。ようし、そろそろ脅かしてやれ。タロウはマサオの耳元で囁いた。
「おろせ~」
一瞬、マサオの方がビクッと固まったが、足が止まる事はなかった。
「おろさんと、祟るぞ~」
「じぃさん、勘弁してくれぇ、勘弁してくれぇ」
マサオの足はそう言いながらも山の入り口へ向かう。
タロウは思った。これはまずい。
このまま村まで帰られると、マサオを笑い者にしようと墓荒らしをしたことが、村の大人達にもバレてしまう。
「おろさんと耳を食いちぎるぞ~」
タロウも必死だった。村はもうすぐそこだ。このままマサオを返すわけにはいかない。
タロウが耳に齧りついてもマサオは走り続けた。顔を涙と鼻水でグチャグチャにしながら。
「じぃさん、勘弁してくれぇ、勘弁してくれぇぇぇぇぇ」と叫び続けながら。
そして、ついにマサオの耳は、根元からブチッと鈍い音を立ててとれた。
その時、マサオの足が止まり呟いた。その声は妙に冷ややかだった。
「ようぅ・・・オラが、こんなにお願いしてもだめか・・・?」
・・・?
「オラが、ずっと虐められればいいと思ってるんだな」
・・・こいつは何を言っているんだ。
「だったらもうお願いしねぇ・・・。無理矢理黙らせてやる」
そう言ってマサオは、懐から大きな出刃包丁を取り出した。
タロウは度肝を抜かれた。
慌ててマサオの背中から飛び降りようとしたが、帯で縛り付けられた体はビクともしない。
マサオが自分の背中に向けて、出刃包丁を振りかざした。
タロウは叫んだ。
「ま、待て、マサオ!俺だよ、タロウだ、タロウだ!」
こいつはやっぱりアホだ。死人を刺し殺そうとしている。あやうく間違って殺されるところだ・・・。
しかしマサオは言った。冷たく小さな声で。
「そんな事、最初から分かっているわい」

コメントを残す

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

怖い話・怪談カテゴリー