2015年09月25日

沙耶ちゃんシリーズ。
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ4【友人・知人】


870 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:36:17 ID:fkpUHwKQ0

翌週は何事もなく過ぎた。
俺としては、H先輩あたりの首をもぎ取ってやろうかと思ってたんだがww悪夢の欠片も見なかった。
仕事の合間に白骨遺体のことを話すと、先輩は「気持ちわりーな。寺行って来い、寺!」と、
その筋で有名な大阪の寺まで調べてきた。
江戸時代から慰霊で名を馳せている、由緒のあるところだそうだ。
日曜日には休みをくれるというので、遊興も兼ねて行ってみることにする。

沙耶ちゃんに「一緒に行かない?」と電話をすると、
『・・・お寺ですか・・・あんまり勧めませんけど・・・」と、歯切れの悪い答えが返ってきた。
理由を聞く。
『除霊って好きじゃないんです。一方的に霊を追い出してしまうことなので。
 できれば、話し合って浄化してもらいたいんですけど・・・』
なるほど。沙耶ちゃんらしい考え方だよ。
正直俺は、儀式でこの厄介な現象がなくなってくれるとは思わない。
ただ、祓ったから霊に勝てると、自信をつけたいだけなんだ。
そう説明すると、沙耶ちゃんはやっぱり乗り気ではないようだったが、
『まことさん1人で行かせるのも心配なので』と承知してくれた。





871 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:37:02 ID:fkpUHwKQ0

鉄道を使うつもりだったので、ローカルな駅に車を置いて、新幹線の乗車駅行きの急行に乗った。
ふだん乗りつけないから、切符の買い方がわからなくなってたよorz
沙耶ちゃんも珍しい車窓の景色に目を輝かせていた。「子どもの頃以来かも」だって。
今だって子どもみたいなもんだw

市を2つまたぎ、そろそろ都市圏に入ろうというところで、列車は小さな踏切を渡った。
遮断機の向こうで待つ通行人と車の列。見知った顔があった。
「あれ、見覚えない?」と沙耶ちゃんに振ると、彼女は首をかしげた。
あ、そっか。沙耶ちゃんは1度しか会ったことがなかったな。
3年前の春から夏にかけて、毎晩コンビニに来ていたキャバクラ嬢ふうの客だ。
今の格好は普通の主婦っぽかったが、激しく脱色した髪が名残をとどめている。
そっか。見なくなったと思ったら、こっちに移って来たんだな。

踏み切りが後ろに流れて見えなくなったタイミングで、前方に小さな駅が見えてきた。
この列車は停まらないはずだ。
駅に停車していた鈍行電車が動き始め、俺たちの横を対向して過ぎて行く。
いかにも地元という感じの利用者で賑わっていた。
平和な風景としか言いようがない。大阪まで何しに行くんだか忘れそうになったよ。
でも俺たちの列車は、予定のない駅に緊急停車してしまった。



872 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:37:50 ID:fkpUHwKQ0

駅のけたたましいブザー音が、密閉された車内にまで飛び込んだ。
ドアが開かないので、乗客の数人が不安げに立ち上がって様子を窺っている。
駅員がホームを右往左往しているのが見えた。怒鳴っている声までは聞こえない。

5分ほどしてから、この列車の車掌と思われる制服組が車両を回ってきた。
「ただいま踏切内で、人身事故が発生しました。ダイヤ調整のため、しばらく臨時停車いたします」
近くにいた50代ぐらいのおっさんが車掌に噛みつく。
「なんで通り過ぎた踏切の事故で、この電車まで動かなくなるんだ?!」
その横の妻らしい厚化粧のばあさんも、したり顔で付け足す。
「事故なら前もあったけど、関係ない電車まで止めることはなかったわよ!早く出してよ!」
車掌は動じた様子もなく、「しばらくお待ちください」と言い残して、他の車両に移っていった。
俺のせいなんだろうか?根拠のない罪悪感が頭をもたげる。
俺のせいで、列車が止められたんだろうか?
俺のせいで、列車を止めるための事故が起きたんだろうか?



873 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:38:29 ID:fkpUHwKQ0

再出発が難しいというので、俺たちはバスに乗り換えることになった。
俺は・・・行かなかったよ。バスまで止まると気の毒だからね。
駅のロータリー沿いに表通りに出ると、踏切の方向に向かった。
沙耶ちゃんが小走りでついてきて、俺の腕を取る。
「どこに行くんですか?」
どこって・・・どこに行こうとしてんだよ、俺?
「確かめないとね」とだけ言った。誰が轢かれたのか。死んだのか。助かったのか。

踏み切りのそばでは警察がバリケードを張っていた。
現場はかなり遠いな。轢いたと思われる鈍行電車の側面だけしか見えない。
野次馬の中から下着姿の爺さんをつかまえて聞いてみた。
「どういう人が事故に遭ったんですか?」
爺さんはひどく同情した面持ちで答えた。
「妊婦さんが電車に飛び込んだらしいよ。まだ若いのにねえ」
沙耶ちゃんが小さく悲鳴を上げたので、爺さんから視線を移すと、
2人の鑑識が、ビニールシートを警察車両に乗せているところだった。
「茶色の髪が見えた・・・」
沙耶ちゃんの呟く声が震えていた。



874 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:39:29 ID:fkpUHwKQ0

駅のベンチに腰かけながら、なぜか俺が沙耶ちゃんを落ち着かせる羽目になった。
「ああいう死に方した人、初めて見たから、ちょっと動揺しちゃって・・・ごめんなさい」
って言うけど、もっと壮絶なのに何回も会ってるじゃないか・・・w
「同じ死人でも、やっぱり霊と死体とは違うの?」と質問すると、
「私は不成仏な霊にはならないけど、死体にはなるから・・・自分がああいう姿になるのが怖い」と答えてきた。
そうだね。そのとおりだ。肉体に傷がついて再生不可能になるってのは、こんなにも怖いことなんだ。
でも、その最悪な終末をキャバ嬢に取らせたのは、俺じゃないのか?
「俺がここを通らなければ、あいつ、死ななかったのかな・・・」
思わず口についた言葉。
「俺、すごく迷惑なヤツだ・・・」
「まことさんがどう関係するの?」
沙耶ちゃんは本気で不思議そうに言う。
「だからさ、除霊なんかに行こうとするから、こういう形で足止めされたってことだよ」
確信的に説明すると、沙耶ちゃんは珍しく理解力を示さなかった。
「全然つながりがわかりません」
慰めてんのかな?・・・慰めてるんだよな?・・・
ここでわかってもらわないと、俺、泣きつくこともできないんだけど・・・orz



875 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:39:53 ID:fkpUHwKQ0

「あのね、よく考えて」
沙耶ちゃんが一言一言に力を込める。
「もしまことさんをお寺に行かせたくないだけなら、車を動かないようにすればいいじゃないですか。
 霊って、電気系統を壊すのは得意なんですよ」
へえ。そうなんだ・・・
オカルトで照明がいきなり切れたり、電源の抜けているラジオがついたりっていう、話を思い出した。
「なのに、わざわざまことさんの知ってる人を、家から連れ出して自殺させるなんて、
 そんなエネルギーの要ることすると思います?」
俺は首を横に振るしかない。
「だから、あの人が踏み切りに飛び込んだのは、あの人の意思です。まことさんには関係ありません。
 気にしちゃダメです」



876 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:41:30 ID:fkpUHwKQ0

・・・そっか。俺はたまたま事故に巻き込まれただけなのか。
『お箸要らないです』と屈託のない笑顔で断ってたあの人が、妊娠中なんて幸せの絶頂期に自殺したのは、
あの人自身の運命であって、俺には何の関係もないのか。
「無理」
俺はまた首を振った。
「そんなふうには思えない」
沙耶ちゃんはとっても困った顔をした。
「弱気になると憑りつかれちゃいますよお」
いっそ。
「そのほうが楽かもしれない」
沙耶ちゃんはうな垂れた。
「私はイヤです・・・」
憑りつかれるっていうのは、どういうことなのかわからないが、
きっと、俺が俺でなくなるってことなんだろうなと思う。
俺は沙耶ちゃんの柔らかい猫っ毛を撫で回した。こういう愛情もわからなくなっちまうのかな。
もしこの後、何も起きずに事故処理がなされ、無事に自宅まで帰りつけたら、
俺は沙耶ちゃんの『偶発説』を信じられたかもしれない。
でも残念ながら、俺のほうが正しかったみたいだ。
踏み切りのほうから、泥色の小学生が歩いてくるのがはっきりと見える。



877 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/19(火) 00:42:03 ID:fkpUHwKQ0

坊主は何かを抱いていた。首か、足か、残りの腕か。
こんなガラクタ集めて、自分を再生して、成仏できると思ってる霊がいるのが笑えるね。
坊主は俺の膝の上に『それ』を置いた。
血まみれの生首のほうがまだマシだった。
胎児だったんだ。臍の緒が長く長く伸びていて、線路上をさまよっている母親とつながっていた。
俺さ。由香さんをあんな目に遭わせておいて言うのもなんだけど、子どもの死体はダメなんだよ。
沙耶ちゃんはすでに俺の視界にはいない。
見えるのは、血の海になった事故現場と、坊主と、不完全な形の胎児だけ。
「次は右腕と上半身と下半身以外だね」
俺がやつらの世界に近づいたぶんだけ、坊主の声がクリアに聞こえた。
「本物を提供するよ」
俺はためらいなく人間をバラせる環境が整ったことに、悦びを隠せなかった。

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